マルセウの想い

夕方からのトレーニングを、久しぶりに訪れた聖籠。

マルセウが反町監督に叱られていた。
「文句を云うんだったら、ブラジルに帰ってもいいんだぞ!!」

いつもはひょうきんな上間エデルソンも、監督の横で真剣に、それを伝えていた。

あたりが何とも云えない、秋の気配の中で、その言葉が滲みこんで行く。
選手たちの沈黙が拡がる。

8月に18才になったばかりのマルセウ。
バイーア ジュニオール(下部組織)からやってきた。
2005 U-18ブラジル代表候補でもある。

FWとして、最後のシュートも未だ少年。素直なままだ。
しかし、嗅覚はある。
海のもの。山のものと、なるかはこれからだ。

マルセウは、あんなにきつく叱られて。
何を思っていたんだろうか…。
「ぼくは、ヴェラクルスの故郷に帰る」と
悲しく、センチな少年のこころに戻っていたんだろうか。

薄暗くなった新々バイパス新潟方面の渋滞の車の中で、わたしはそんなことを、取りとめもなく考えていた。

前方「弥彦山」向こうの夕空に。
日本海を越えてはるかアジア大陸から「一番星」がプラチナ色に輝いていた。

「いや、そんなことは無い。あれほど大好きなサッカーのために、聖籠まで来ているのだから。」

「あの後、後半終了30秒前。反町監督のみんなへの叱責にも似た声の中で、少年マルセウはくぐり抜けて、シュートしたじゃないか。」

「素直な少年のシュートは、またしてもGKにさえぎられたけれど。」

その直後のマルセウ少年の白い笑みに、「くやしさ」の言葉が書かれていたのだ。

一筋に貫く輝きは、磨かれて増し、一番星の輝きにも似て美しく、純粋に思った。
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