3枚目交代の笛がなった頃

マルシオのコーナーキックから気迫の坂本の1点を守りきって、今年の甲府戦は終了した。

帰りは雨空も上がって、小瀬公園からのシャトルバスに乗り、事前に往復分500円で購入した最後の一枚を入れて、甲府駅前を降りた。

チェックイン済みの甲府市丸の内の「宿」を目指して歩く。

ところで、開始前のアウェイゴール入場口階段下喫煙コーナーで、赤あずき色のTシャツの背中に、深井正樹の名が記された四角いプリント地のみなさん方がおられた。
そして、そこに、山梨 増穂と書いてあった。

私と同じ位の、年配のお父さんに声を掛けて見た。

「深井選手は、増穂の出身なんですか?」

「あー、増穂町から名門韮崎高校に行ったんだなー。」

「私、電車で松本‐茅野と来たんですけど、駅で云うと深井選手はどこの駅から通ってたんでしょうか?」

「そっちじゃないんだ。身延線の市川大門駅だな。」
「お父さんがとても心配してるんで、おれ達も応援してるでなー。」

それから、私は深井選手を追いかけていた。

あの小回りでスピンが効いたダイナモ、ミニオートバイの動きを。

開始前に雨の中。シュートがゴールの中でも弧を描く。
雨も上がってハーフタイムのシュート練習。
後半出場に掛けたキックが回転を増して、稲穂のように、ふるさとの黄金色のゴールに突き刺さる。


1-0で後半を迎えて、まず松下が。
35分を過ぎて2枚目の交代に呼ばれた千葉和彦は、「よっしー!待ってましたー!」とばかりに、ベンチサイド右脇アウェイから飛び出していった。

思わない5分の延長時間が表示された。

主審の笛がなる度に、深井正樹はウエアーを脱ぎだして、「ゲームに飛び込んで行きたい」衝動に駆られている様に見えた。

どうにか勝ちには勝ったが、3枚目交代の切符は、遂に切られることは無かった。

「深井は、監督に信頼されていないんだろうか…。」

そんな不安も私のこころをよぎった。

「いやー、勝っていたんだから、流れを変えたくない。あえてFWをここで出す必要はないのだ。」と自分に言い聞かせた。

翌朝、甲府駅から中央本線で松本に向かう。
曇り空。
各駅の高校生の乗り入れを見つめながら、いつしか篠ノ井線で長野駅。飯山線で越後川口まで。
上越線で長岡駅。
信越線に乗り換えて新潟駅に向かう。

濃緑色の田んぼに、穫り入れ間近い黄金色の稲穂が風で寝ている部分も見える。

稲穂が続く。
長岡を迎える頃からは、どこまで広い田んぼの新潟。

いつごろから「稲刈り」だろうか…。

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